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かもめのジョナサン リチャード・バック 五木寛之創訳




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かもめのジョナサン完成版 [ リチャード・バック ]
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1970年刊行
ヒッピー文化とあいまってクチコミで広まり1972年6月以降に大ヒット。
ラッセル・マンソンのカモメの写真が随所に挿入されている。
本書は章がPart4まであるが、Part4が発表されたのは、2014年。
作者、リチャード・バックが、2012年に小型飛行機の操縦中に墜落事故をおこし重傷を負った後である。
Part4部分は1970年刊行の際にすでに出来上がっていたが、その際は発表しなかった。
あらすじ等はウィキペディア記事で確認を。



かもめのジョナサンのどの部分に惹かれるかは、世代、背景の違いによって変わるだろう。
初めて読んだ際は、Part4部分が面白く、共感でき、いいなぁと思った。
Part4ではジョナサンが神格化されすぎて、飛ぶことよりも儀式や解釈に多くの時間を費やすようになってきた。
その状況に絶望した若いかもめアンソニーが自殺しようとしたが、その際「ジョナサン」と名乗る、かもめが現れるというところで本書は終わる。
この章では、ジョナサンという神に慕う愚かな信者たちを非常にシニカルに描いており、苦笑してしまった。
40年の時を経て、どうしてこの部分を発表しようとしたのか。
当時の時代背景を考えたからじゃないか。
何かに熱狂する若者が多かったヒッピー文化の時代、リチャード・バックは冷ややかな目でその社会現象を見ていたのかもしれない。
しかし、そんなときPart4部分を発表してしまうと、白い目で見られたかもしれない。



2回目に本書を読み返したときは、Part3までの内容についてじっくり考えながら読んだ。
ジョナサンは、飛翔技術の向上ということに熱中するあまり、はみ出しものであると見られ、群れから追い出された。
追い出されても、新しい場所で同類に出会え、一緒に技術を高めることができた。
瞬間能力まで身に着付けることもできた。
その後恩師からは、指導することの大切さを教わる。
そして、群れに戻って、飛翔技術を伝えたいという気持ちになり、行動する。
たくさんの弟子を作った。


ジョナサンの鳥生は、全体的に成功したように見える。
リアルな世界では、追放された後、自分の居場所を見つけられず、精神を病んでしまう人もいると思う。
また、群れに戻っても、飛翔したいというものに出会えるとは限らない。
何かを伝えたいという気持ちがあっても目も向けられず、流されてしまうことが多い。
ちょっと出来過ぎじゃないか?この物語?という思いも否めない。


「何か興味のあることに、周りの目を気にせず、やり切る」という部分だけを拾ってしまうと、「目標を持つものがない人」にとっては、ジョナサンの生き方に息苦しさを感じることだろう。
現在の私は、特にこれといった大きな目標はないため、そのテーマはあまり心に惹かれなかった。
大きな夢が無いことに少し寂しい気持ちを持ちつつも、そこから、私の小さな楽しみ方を見つけようとしている。(小さな目標を一つずつ達成していく)
枯れてしまった30代の意見じゃなく、今頑張っている若い子達にこの本を読ませたらどんな感想を持つのだろうと、ものすごく興味がある。


この本を読んで、あ、興味あるなって思ったものは、「宗教もしくは思想の成り立ちと持続」についてだ。

ジョナサンに関しては「ただ飛びたい」から派生している。
この本では大体200年くらいジョナサンの飛翔技術の伝承が続いている。
五木さんの後書きでは、法然を連想したとある。
仏教の基礎知識もなく、ふんわりした印象で、なんとなくわかるかもという感じの感想しか書けない。

現在、少しずつ哲学、思想についての理解を深めているところ。
たまたまこの本の後に「努力論」幸田露伴を読み始めたが、感じが似てるなぁとも思った。


借福 

自分が持っている才能やお金などを正当に使って、無駄にしないこと。

ジョナサンは飛びたい!思いと、飛ぶ才能もあり、

飛翔訓練に突き進んで行った。


分福

幸福を独り占めにするのではなく人と分け合うこと。

飛ぶことで幸福を得たであろうジョナサンは、沢山の弟子を作り飛翔方法を教えていった。


植福 

自分の力や情愛知識などを社会に貢献できるようのすること。

弟子を指導者に育て上げ(弟子に指導者としての自信をつけさせる)、かもめ界に革命を。



たくさんの思想が世界に溢れている。

色々見ていくと、言ってることが似通ってて、本質が近いんだなぁと気づく。

自分を形作る物に意識を向けたいと思う今日この頃。

私にとって、今、突き詰めたいことは、思想を学んだり、小説を読んだり、芸術に触れたり、人々と喋ることで

自分の感情を知り、どう生きるか考えることだなぁとぼんやり思っている。